性別≠不一致

でも、


「そんなこと、わかってるっつーの」


長年囚われ続けた呪縛から逃れたわけでも、見て見ぬふりが出来るようになったわけでもないのに、なぜか肩の荷が下りたかのように気持ちが楽になっている。


それはきっと、竜司くんが側にいるから。


竜司くんが側にいてくれたら、俺は俺でいられる。


男とか女とか、そういうのは一切関係ない、素の自然体の俺でいられるんだ。


もうわかりきってたことなのにな。


男のように振る舞わなくちゃとか、女に見られないようにしなくちゃとか、それが当たり前で自然とそうしてきたけれど、竜司くんの前だと当たり前にしてきたことを忘れてしまうんだ。


だからかな。竜司くんといると凄く落ちつく。このままずっといたいと思う。


「竜司くん」


今度は俺が抱きしめる。

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