性別≠不一致
バイトに犬の散歩をさせるのはどうかと思ったけど、小さな喫茶店だしバイトの一人がいなくてもマスターで十分回せるはずだ。
でもマスターは俺の名案を、首を横に振って否定した。
「出来ればそうしたいんですけど、何分竜司くんがね」
そう言うと視線は自然と竜司さんに。
まさかとは思うけど……。
「まさか、犬が苦手なんですか?」
「ははははっ。実はまあ、うん、そうです……」
ガックシと項垂れる。
竜司さんは幼稚園の頃、野良犬に足を噛まれて以来トラウマになり、犬が苦手なのだと言う。
じゃあどうしてここのバイトを始めたんですかと聞くと、スピカは大人しい犬だから大丈夫だと答えた。
それでもまだ触れるのは怖いらしい。まして外に出るとテンションが上がるスピカと二人きりになるのは勘弁願いたいと力説する。