性別≠不一致

そう考えると何気ないことで未来は大きく変わっていくんだなぁ~と、珍しく物思いにふけってスピカの存在を頭から掻き消していた。


スピカの散歩コースは、近くに流れる川の土手。


店では大人しい老犬のスピカも散歩になるとテンションが上がるのか、小走りになってずんずん進んでいく。


リードの持ち手である千秋は、リードを引っ張ってスピカの暴走を押さえている。


あんな細っそい身体でよく力負けしないな。犬に慣れているだけのことはあるぜ。


にしても犬恐ぇえええ! 動くと恐ぇえええ!


スピカが大人しくて賢い犬だから平気だけど、こうしてはっちゃける姿を見ると恐怖心が蘇る。


跳びついてこないよな? あんなデカイ牙で噛まれた指なんて持ってかれる!


「千秋、大丈夫か?」


ちなみこの「大丈夫か?」とは、引っ張られて大丈夫か? というのではなく。


スピカが野生の本能を取り戻して俺に食いついてこないよな? という意味合いが強い。
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