性別≠不一致
本当はいけないらしいから、絶対に口外しないよう口止めされているけど。
授業が終わって『スピカ』に顔を出すと、店にはゴウさん一人だけ。
テーブル席でノートパソコンを広げながら、マミさんお手製のサンドイッチをほうばっていた。
「おお、ちー坊やないか」
「こんにちは。今日も煮詰まってるんですか?」
「まあな。なんちゅうかこう、ネタが下りてくるんやけど上手く変換でけへんちゅうか……文学の神様に嫌われてる感じや」
マミさんから聞いた話では、ゴウさんは浮き沈みが激しいタイプの作家らしい。
ノッテいる時は執筆がずんずん進むけど、オチている時は一文字たりとも浮かんでこないとか。
そんな時は息抜きも含め、ここに来てマミさんに色々なアドバイスを貰っている。
俺からしたらアドバイスというより一喝だけど、ゴウさんにはそれが一番効果的のようだ。
向かいの席に腰かけると、スピカが尻尾を軽く振りながら近づいてくる。