性別≠不一致
俺の足元に伏せをすると、前足に顎を置いて上目づかい。可愛いなこいつ。
「そういえば、マスターもマミさんもいないですけど、どうかしたんですか?」
カウンターの奥に座るマスターも、ホールで世間話を交わすマミさんの姿も見えない。
竜司くんは今日、本職の方に努めているからいないのはわかるけど。
居るのはゴウさんとスピカと俺だけ。店員は誰もいない。
奥の方に居るのかと思っていたら、ゴウさんが答えを教えてくれた。
「マミやったら大学。マスターはスピカの餌が無くなりよったって買いに行ったぞ」
「え……でも閉店の看板かけてなかったですよ」
「この時間帯やったら誰も来うへんで。来てもほとんど常連やし、俺と店長代理がおるから大丈夫」
「信頼されてるんですね。ゴウさんは」
「伊達に九年間マミとつるんでへんからな。それに信頼されてるんは俺やのぅてこいつや」
そう言ってスピカに視線をやる。