性別≠不一致

「そうか? 俺は千秋の手が羨ましいけど」


薄暗い空間で竜司くんが呟いた言葉は、その意味を理解するのに時間がかかった。


「なんで?」


「なんでって、千秋の手すげぇ温ったけぇもん」


竜司くんは言う。


「心が温たかい人は、掌も温たかいらしいぜ。だから俺は千秋が羨ましい」


「竜司くん……」


俺も馬鹿だけど、竜司くんも馬鹿だ。


「それ逆」


「へ?」


「掌が冷たい人間は、心が温かいんだよ。だから逆」


「えぇっ!? いやでも俺が聞いたのは……まじで?」
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