性別≠不一致

「だね。本当に働いてたんだ」


何が可笑しいのかクスクスと笑みを零す千秋に、俺は冷や汗出っぱなし。


知り合いが仕事場に来る時の心情ってこんな感じなのか。


なんか知らないが妙に焦る。まだなんもしていないの。


「何しに来たの?」


「もちろん髪を切りに」


ですよねー。普通に考えたらそうですよねー。


「だからってなにもここに来なくてもさぁ」


「ネットで調べたら結構お手軽価格だし、竜司くんが働いてるとこだから来てみたかったんだけど……迷惑だった?」


「いや、ちょっと驚いただけ。少し待ってろ」


予約表を捲って時間を確認する。


あちゃー。どこかもかしこも埋まってるわ。こりゃダメだ。
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