この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
ずっと何かを言い合ってきたらしい美代とヒゲ男。


「ほんとゴメンよ美代ちゃん…いきなり顔に飛びつくから慌てちゃったんだよ」


「わかんないです…ひっく…いくら気が動転したからってマサルさんを車道に投げるなんて…!」


覗き見える美代の顔は涙に濡れていた。


そんな美代に必死にすがるヒゲ男。


「大丈夫だよ…今日は探してもいなかったけど…ウサちゃんはきっと何処かで無事に生きてるよ」


「当たり前です!!」


ヒゲ男の言葉に声を大きくする美代。


「俺も一緒に探して必ず見付けるから…」


「いいです!ひっく…先輩いたらマサルさんが怖がって帰ってきてくれない…」


泣きじゃくる美代にほとほと困り果てたという様子のヒゲ男。


美代は玄関の前まで来ると


大きなカゴのバッグの中に腕を突っ込み家の鍵をがさがさと探した。


「もう…とにかく今日は帰ってください」


「………」


立ち尽くすヒゲ男。


反応しないヒゲ男に美代はその肩を帰れと言わんばかりに押した。


「申し訳ないですけど…しばらくアキラ先輩の顔見たくないんです」


「………っ!」


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