この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「…………」


行き場をなくした俺はしばらく美代の消えた玄関を見つめてから


今夜一晩、時間をどこで過ごそうか考えた。


今までは当たり前のように暖かくて柔らかな寝床があった。


しかし今はそれがない…


俺は行く宛もなくとりあえず、アパートから緑地公園へ向かって歩いた。


アパート周辺でうろうろして、さっきのように不審な目で見られたくない。


美代のアパートが見える場所にベンチを見付けて俺は横になってみた。


足がはみ出るけど仕方ない。


とりあえず今夜はここで過ごして明日また美代にアプローチしてみよう。


難しい問題を後回しにするような気持ちで、俺はゆっくり目を閉じた。


本当は早く美代に会いたい…


せっかく人間になれたんだから。











しかし、美代との接触は夜が明ける前に意外な形で訪れた。




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