この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
月明かりの下
辺りがどっぷりと暗闇に包まれた頃
まっ暗な緑地公園の中で小さな声が聞こえてきた。
“マサルさ~ん”
“マサルさ~ん”
―――…ん?
俺を呼ぶ声に俺が薄く目を開けると
万緑がうっそうと生い茂る遠くの暗闇の中にチカチカと懐中電灯らしき灯りが見えた。
“マサルさ―ん”
繰り返し俺を呼ぶその小さな声
―――え…?
俺は思わず体を起こした。
だってそれは小さいけれど
確かに美代の声だったから
こんな真っ暗闇の中でまさか俺を探しているのか?!
「ば…か…っ」
なんて危ないんだ。
夜の緑地公園に女子大生が1人で来るなんて…!
俺は気付くと弱々しい光を見た方へ向かって走り出していた。