この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺はなき続ける美代から懐中電灯を預かると


美代の小さな手をひいて歩き出した。


「危ないから家まで送る」


美代は終止鼻をすすりながら、大人しく俺についてきた。


美代…


美代の手を引きながら


俺は美代を守れる喜びを噛みしめていた。















美代の部屋の前まで来たときに美代はぽつりと言った。


「あの…私あなたと知り合いでしたっけ?」


アパートの明かりに虫が集まって飛んでいる。


「え?なんで?」


俺はぎくりとしながら美代の方を振り返った。


明るい中で初めて向かい合った俺と美代。


「っ…///」


美代は慌てて涙と鼻水まみれの顔を拭い


俺は慌ててそんな美代の手を離した。


「だって…私の名前呼んだし、住んでる場所も…」


美代は恥ずかしながら、必死に顔を拭うも


泣きすぎたせいか鼻水がぴろんと下に伸びていた。


「あ―…実はこの辺りに住んでて」


俺はそんな美代を見つめながらまた嘘をついた。


どうしても嘘が重なる…


そう言えば、いつか銀が聞かせてくれたピノキオは


嘘をつくと鼻が伸びるらしい。


俺、ピノキオじゃなくて良かった。



< 107 / 513 >

この作品をシェア

pagetop