この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
美代は部屋に入るとすぐに薬箱を探し始めた。


俺はそんな美代に続き、ゆっくりと足を踏み入れる。


玄関を入ると短い廊下。


その先にはリビングがあり


リビングの左側には小さなキッチン、右側には寝室がある。


いつもの知り尽くしたはずの部屋。


だけど違和感を感じる。


さらにベランダの手前に置かれた小さなゲージをみて


俺の寝床はこんなに小さかったっけ?と驚いた。


視点が違うだけで、こんなにもどこもかしこも全然違って見えるとは。


しかも


「…戸棚の上にはこんなに物が散乱していたのか」


今まで…うさぎの頃には割合、スッキリした部屋だと思っていたのに


それは単に下からは見えなかっただけらしい。


見えない棚の上の部分はかなり散らかっていた。


掃除しなきゃな…


俺は棚の上の荷物や埃を見つめながらそんなことを思った。


一方、


美代は未だに薬箱を求めて戸棚の中を探していた。


整理整頓が苦手な美代はよくこうやって物を紛失する。


昔からそのたびに俺が教えてやっていた。



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