この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
蘇ってもなお昔と変わらない美代。


そんな美代の背中をみて俺は言った。


「…薬箱はこっちだろ?」


昔と変わらないやり取りに俺はちょっと嬉しくなりながらカラーボックスを指差した。


前に俺が怪我をした時


美代はカラーボックスの中に薬箱をしまっていた。





「―――え?」


俺の言葉に振り返った美代は、カラーボックスを覗いた。


「あれ?本当だ!あったあった」


驚く美代に俺は昔と同じように毒をはく。


「こんなに散らかしっぱなしだから分かんなくなんだろ」


「へ…?」


「伸太郎がこの部屋を見たら悲しむぞ」


「??!」


「まぁ良いからそれ貸せよ」


俺のカラーボックスの前で突っ立っている美代から薬箱を受け取ると


椅子に腰をかけて足の消毒を始めることにした。


しかし――…


薬箱には包帯やテープや薬が入っているがどれがどれだかサッパリわからない。


「おい…消毒ってどれからやれば良いんだよ?」


偉そうな態度だった俺は助けを求めるように美代を見た。


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