この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
美代…


悲しい顔をする美代を見て、俺は心が痛んだ。


美代、


姿は変わってしまったけれど、俺は美代の傍にいるんだ。


「美代…寂しいなら俺のこと、うさぎのマサルだと思っていいよ」


俺は美代を励ましたくて言った。


そんな俺の言葉に美代は少し目を大きくして俺を見た。


俺は続ける。


「あと…その他人みたいなしゃべり方もやめろよ」


正体は明かせないけれど…


俺はあの頃のままだよ。






そんな俺に美代は少し恥ずかしそうに笑った。


「ふふ、マサルさんってほんとになんか変わってる」


「…………」


「人間のマサルさんを…ウサギのマサルさんの代わりになんて、普通思えないよ」


「…そうか」


「うん、でも嬉しかった。ありがとう」


「…………」


美代の笑顔に俺は頬が赤くなった。


美代の嬉しそうな笑顔に…


胸がきゅんと苦しくなるのは、ウサギでも人間でも同じらしい。







美代は風呂に入ってくると行ってリビングを出て行った。


俺はそんな美代の背中を見つめていた。


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