この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「マサルさん、今日からしばらくよろしくね」


「あぁ…本当にありがとう」


「うん☆せっかくだから楽しく過ごそうね」


美代はにっこり笑うと、さっそく袋からおにぎりを取り出した。


「マサルさんがしばらく泊まるなら着替えやお布団も一式いるよね」


透明なセロハンをピリピリと器用に剥いて、出てきたおにぎりをほお張る美代。


それに習い俺もおにぎりを食う。


昨日の昼から何も食べていないから…


実はかなり腹がすいていた。


ほお張ると米と海苔とほのかな塩の味が口に広がる。


「ん、うまいなコレ」


伸太郎の米には負けるがなかなか上手いおにぎりだ。


俺の言葉に美代も頷く。


「あとでマサルさんのもの色々買い出しに行こうね」


美代は次のおにぎりに手を伸ばし、またほお張る。


「金…かかるのか?」


「え?そりゃそうだよ」


「そうか…だけど俺、お金持ってない」


今まで俺のものは当然美代が買っていたけど。


今は多分、俺のものは俺が買うのが妥当だろう。


しかし残念なことに俺は無銭だ。


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