この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「あ、それは大丈夫!仕送り入ったところだから~」


俺の言う意味に気付き、屈託なくそう言ってくれる美代だけど


本当は仕送りに余裕なんかないことを俺は知っている。


伸太郎が毎月米だけは送ってくれるから、主食には困らないが


バイトをしていない美代はいつも月の後半に家計が苦しくなり


おかずがモヤシだけになったりしていた。


「ごめん…あとで必ず返すから」


俺はおにぎりを旨そうに食う美代を見つめた。


美代がひもじくならないようにどこかで稼いで必ず返そう。


「火事にあったんだから気にしなくていいよ。困った時は助け合わなきゃ」


山吹の嘘を信じている美代は、おにぎりを食べ終わると麦茶を飲んだ。


「出かける用意してくるね」


俺はリビングを出ていく美代の背中を見送りながら


今度山吹に会ったら現金の稼ぎ方も教えてもらおうと思った。





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