この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「美代…ごめんな」
俺はレジでビキニを買い終えた美代に頭を下げた。
「俺のせいで…」
頭を下げながら、俺は今買ったビキニの入った袋を見る。
せめて…
このビキニが美代の好きな感じのデザインなら良かったのに。
だけど真っ赤な三角ビキニは、どう見たって美代のイメージじゃない。
俺はシュンとしながら、うつむき加減の美代の顔を覗きこんだ。
たった1日にして、迷惑かけっぱなしの自分が情けない。
人間になっても、美代がいなきゃ何もわからない俺。
姿だけ人間になっても、やっぱり俺は人間じゃない。
人間でも、うさぎでもない。
こんな中途半端な俺が蘇ったことで美代に嫌な思いをさせてないだろうか…
そう思うと心が重苦しくなった。