この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺の回答にさらにポカンとする美代。


「ほえ?どういうこと?じゃあやっぱり料理出来ないんじゃないの?」


「………」


そんな美代を無視して俺は包丁でトマトを切ってみる。


すとんと切れる感触は俺のイメージ通りだった。


昔から伸太郎が飯を作るのを隣で毎日見ていた俺は


やったことがないだけで料理の要領だけは分かっている。


「ほら、切れたぞ。簡単じゃねえか」


初めてにしてはいい手応えだ。


しかし美代はクスクスと笑いだした。


「やっぱり私も手伝いま~す」


そう言うと美代は鍋をとり、中に水を入れた。


「マサルさん見栄っ張りなんだから」


ふふっと笑いながら鍋に火をかける美代に


「ふん」


と俺は構わず料理を続けた。


俺は料理の不得意な美代の弁当を、身振り手振りで指導したこともあるんだぞ?


うさぎに料理を監修される美代に笑われる筋合いはない。


だけど


美代とこんな風に並んで料理をする日がくるとはな…


そう思うと、なんだか幸せな気持ちが込み上げてきた。


俺は包丁から目を離すと美代の方を見た。


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