この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

タンクトップ姿のヒゲ男は


サークルの仲間と汗を流しながらバーベキューの炭に火をつけているところだった。





「ん？どうしたのメイ？」


夏美がメイの異変に気付きその視線を追う。


「あぁ、馬鹿アキラじゃん」


夏美はふふんと笑いながらヒゲ男を見つめた。


「夏美とアキラ先輩は幼なじみなんだよ」


美代が俺の耳元でこっそり教えてくれる。


「へぇ？そうなのか」


それまで無言でヒゲ男を見つめていたメイは、


ふとヒゲ男から視線を逸らすと冷静に言った。




「あの男。今日死ぬかも」





「「え？」」


メイの突然の言葉に固まる俺たち。


「あの男って…アキラ？」


夏美の質問にメイはゆっくり頷くと、淡々と続けた。


「水難の相が出てる」


「す、水難？？」


メイの言葉に、夏美の表情がみるみる青くなっていく。


「…………」


そしてそのまま夏美はヒゲ男の方へ向かって駆け出して行った。


「あっ…夏美…！」


そんな夏美に、俺と美代は目を合わせた。


「え？どうしよ？とりあえず…行く？」


「あ？あぁ」


こうして俺たちも夏美の後を追い、またヒゲ男の元へ行くことになった。








砂浜をかける途中、美代がこっそり俺に言った。


「あのね…夏美とメイにだけはマサルさんのこと従兄じゃなく本当のこと言いたいんだけど良い？」


「ん？あぁ。俺は全く構わないけど」


でも、メイにはそれ以上のことがバレているんだが…



何も知らない美代は、俺の返事ににっこり微笑んだ。