この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
さて……


俺は赤い布の結び目をくわえるとテクテクと歩き出した。


弁当箱が前足に当たって歩みがさらに遅くなったが仕方ない。


確かこの住宅街を抜けるとあと少し。












しかし住宅街を抜けると目の前には車が行き交う道路が走っていた。


ガ―――――――…
パッパ―――――


むせかえるような排気ガス。

国道らしいその大きな道路はとても横切れる様子がない。


そもそも大学までの道のりで、こんな道路を俺は知らない。


『…………』


やってしまった。


俺はどうやら道を間違えたらしい…。


とりあえず途中までは合っていたはずだから、そこまで引き返えしてまた考えよう。


俺は排気ガスで痛む目を堪えながら今きた住宅街へと引き返した。


田舎で生まれ育った俺にとってこんな汚い空気は初めてだった。


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