この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「あの子は、要注意やで。あんまり首突っ込まれたらかなわんからな」


「………」


「それからもう1つええか?」


「な、なんだよ」


山吹はさらに体を近付けて、俺の顔を見てきた。


鼻と鼻がぶつかりそうな位置からの山吹の視線に俺は戸惑う。



「マサルさんは、どこまで聞こえるんや?」


「え、なにが…?」


「全てにおいて、や」


は?

全てにおいて…?


山吹の言葉の深意が解らず、俺はさらに戸惑った。


そんな俺に山吹は言葉を変える。


「例えばな、注文を聞いてた時はどこまで聞こえてたんや?」


「え?」


「人間ゆうんはな、どない耳がよくてもせいぜい5人以内の言葉くらいしか同時には理解出来んもんや。」


「…………」


「どない耳がよくても、5km先の声は聞こえへんしな」


「…………」


「マサルさんは、どこまで聞こえてるんや?」


お、俺??


「俺は…注文を聞いてたときは無我夢中で…」


「せやな。ほんで?」


「…………」


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