この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
『あ―…足が痛ぇ』


高い塀が建ち並ぶ静かな住宅街をゆっくり歩く。


『どこだよここ…』


迷路のような住宅街に、もはや俺は完全に迷子になっていた。



家を出てからもう2時間以上は歩いている。


緑地を離れてからはコンクリートの道が続いていた。


固い地面を歩き続けた俺の肉きゅうは悲鳴をあげていた。


午前中に出発したはずなのに、太陽はいつの間にか真上に来ている。


5月といえど照り付ける日光は容赦なく体力を奪っていった。


俺は遂に道端で足を止めた。


喉もカラカラだし足もクタクタだった。


『ちょっと休憩…』


電柱の角に身を寄せる俺。


普段なら汚くて絶対こんな所に腰は落とさないが…

今はそれどころじゃねぇ。


もう昼なのに美代に弁当箱を届けられなかったな…。


そんな事を思いながら俺は小さな眠りについた。


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