この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「どや?マサルさんが自分で稼いだお金やで?」


山吹はにやにやと顔を近付けてくる。


俺が生まれて初めて稼いだお金…


「…あ、ありがとう」


俺は山吹に頭を下げた。


「よしよし。よう頑張ったなぁ~」


山吹は俺の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。


「や、やめろバカ」


子供のような扱いをされて、俺はその手を払いのけた。



「あ、山吹さん、メイ知らないですか?」


じゃれる俺と山吹に、美代は少し遠慮がちに山吹を見る。


そう言えばメイの姿も、ずっと見ていない。


「あの子ならマサルさん達が走っていった後に帰ったで」


山吹は、なははと笑う。


「あ、そうなんですか」


「おぉ。マサルさんと美代ちゃんも気ぃつけて帰りや」


こうして俺たちは山吹と別れた。





しかし…


俺は最後の山吹の言葉に違和感を感じていた。


“あの子ならマサルさん達が走っていった後に帰ったで”


夏美が危険だと教えてくれたのはメイなのに…


いくら淡白なメイでも、友人が危険だと知っていてそのまま帰るだろうか?






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