この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
そんなこんなで和やかな時間は過ぎていった。
最後にはヒゲ男がデザートまで用意してくれていた。
「柚子シャーベット美味し~…」
デザートスプーンを口に入れてにんまりする美代。
その時
カウンターの奥から50代半ばの男性が出てきた。
ヒゲ男と同じ板前姿の男性は、俺たちを見ると白い帽子をとりお辞儀をした。
「らっしゃい。君がうちのアキラと夏ちゃんの命の恩人かい?」
男性はヒゲ男の親父らしい。
ヒゲ男の親父と目が合い俺も軽く会釈をした。
「本当にありがとう。なんとお礼を言えばいいのか…」
「いや、こちらこそ旨い寿司をご馳走になってます」
俺の言葉にヒゲ男の親父は優しい瞳で微笑む。
「ところでアキラ」
「んぁ?」
ヒゲ男の親父に呼ばれ、ヒゲ男はわざとらしくぶっきらぼうに
そして少し照れくさそうに返事をした。
「なんだかよく分からないんだがな?TV局の人間がうちの周りにいるようなんだが…お前なにか知ってるか?」