この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
『カラスに襲われてたマサル氏をボスが助けてくれたんやっポ』


その声に頭上を見ると銀が飛んでいた。


話を聞くと、夕方用事を終えた銀が俺の家に行くと帰っていた美代が俺を探していたらしい。


そこで銀は俺を心配してボスと一緒に俺を探し回ってくれたんだとか…


『銀さんの頼みじゃ断れニャい…』


銀は草の茂みに俺を下ろすと、俺を見た。


『ここは緑地の中で俺の寝床ニャ。マサル腹減ってんニャろ?』


そう言ってボスはなんだかよく分からない草をくれた。


『飯にありつけない日の飯ニャ。甘ったれマサル坊の口には合わんかもしれんがニャ』


『…………』


俺はヨタヨタの体でその草を口に含んだ。


カラカラに渇いた口は震えてうまく動いてくれない。


ゆっくり噛むとその草はほのかな苦味と共に

空腹の俺を静かに癒してくれるようだった。




『…っ…』



うまい


ただの草がこんなにうまいなんて…



『それ食ったら家まで送るニャ。銀さんはもう夜だし帰んニャ』


『クルック…悪いっポねぇ。夜は目が見えへんっポ』


『鳥目は仕方ニャいさ』


ボスにそう言われた銀は、俺に元気を出すよう励ましてから飛んで行った。


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