この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「……………」


俺は責任者に名刺を返した。


「…俺の未来よりも生け簀の魚を買い取ってくれ。それに俺はそういうの興味ない」


俺の答えに責任者は一瞬固まった。


「なんだ?もっと条件が必要か?」


「そうじゃない。ただ興味がないだけだ」


俺はそういうのがしたくて力を証明した訳じゃない。


「……………」


責任者は面白くないという顔をした。


「それなら…私も生け簀の魚は買えんなぁ」


「は……?」


責任者の言葉に今度は俺が目を見開く。


「君のした会話だって怪しいしなぁ。あれだけじゃ信じられないよ」


「な……ッ」


「まぁ、これからも君が私の元で証明していってくれるなら…信じてもいいがね」


責任者はニタリと笑った。


「…………!」


つまり…俺の契約が交換条件ってことか?


「き…汚いぞ」


「だけどこれは君にとってもプラスなんだよ?」


「……………」


責任者の手段を選ばないやり方の汚さに、俺は沸々と怒りを感じた。


「絶対にうまくいく。君の力は金になる」


「私に任せれば必ず成功させる。君は地位も名誉も手に入るんだよ」


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