この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺は心の中で強くそう叫んだ。



すると――――…


責任者はなぜか急に目が覚めたような顔をした。


「…はッ!そう言えば私にはまだ仕事が残っていた」


責任者は思い出したようにそう言うと慌てだした。


「あ、そうそう、これ…」


そして責任者はヒゲ男に名刺を渡した。


「とりあえず、生け簀の魚は買い取るから海に返してやってくれ。後で金額を知らせてくれるかな?」


「え……?!」


責任者の態度の変わりように、ヒゲ男は名刺を手にポカンとした。


しかし責任者はそんなことにはお構い無しでバタバタと皆に握手をしていく。


「本日は良い取材が出来た!ありがとう!」


責任者はペコペコと頭まで下げていく。


そして

一通り挨拶を済ませると責任者一行は機材を乗せた大型のバンに乗って去って行った。





「………な、なんだったんだ?」


「………………」


訳のわからない俺たちは、ただその光景を見送るしかなかった。








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