この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
リバウンド
「ふあ~なんか…ドット疲れたねぇ」
スーパーからの帰り道。
俺と美代は並んでオレンジ色に染まる住宅街を歩いていた。
あのあと――――…
TV騒動の後、
俺たちはヒゲ男の運転する軽トラで、生け簀の魚たちを海まで運んだ。
「あぁ…もう今日うちの店営業できねぇわ…」
逃げていく魚を切ない目で見つめるヒゲ男。
佐之助や弥彦ほか、すべての魚は無事に海に帰ることが出来た。
「だけど結局、また新しい魚は仕入れるから。なんつーか複雑なんだけどな」
ヒゲ男は最後に俺にそう言った。
その事に関して、俺は何も言えなかった。
俺はただ佐之助と弥彦たちを助けてやりたかったんだ。
それは偽善なんだろうか…?
そのあと俺たちは軽トラで美代の家の近くのスーパーまで送ってもらった。
ヒゲ男と夏美に別れを告げ
スーパーで買い物を終えた頃には夕刻になっていた。