この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「確かに、なんか疲れたな…」


体がひどく疲れて倦怠感が付きまとう。


欲を求める人間の汚さを見せつけられ


佐之助たちを救ったことの善悪もわからない。


なんだかスーパーの袋さえも、ズッシリ重く感じる。


「あ!お魚さん達、別れ際になにか言ってた?」


美代の明るい声に顔をあげる。


「…ん?あぁ。ありがとうって言ってたぞ」


佐之助は海に妻と子供を残していたらしい。


広い海でまた家族や仲間と会えるか分からないが…


佐之助の瞳は希望で輝いていた。


弥彦もまた恋人を探すらしい。


「そっかぁ、じゃあ良かったね!」


美代は嬉しそうに微笑んだ。


「…………」


美代の笑顔は不思議だ。


重かった体も心も、なんだか軽くなる気がする。


「あぁ、そうだな。良かったな」


俺も美代に微笑んだ。


「帰ったら晩ごはんの前にいっちょお昼寝しよっかぁ」


「何を言ってる…もう夕刻だぞ」


「だけど疲れて眠いよ~」


「今寝たら夜が寝れなくなるぞ」


「え~なにその子供扱い」


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