この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
ガチャ…


ボスの叩いた音に反応して中から美代が出てきた。


美代の顔は泣き疲れたというように目が虚ろだった。


美代は前を見たまま不思議そうにキョロキョロしている。


『美代…』


俺は小さく美代を呼んだ。


美代は俺の鳴き声で下を向いた。


「マ…マサルさん…ッ!!!」


虚ろな美代の目が大きく見開かれる。


美代は慌て俺を抱き上げた。


「マサルさん!どうしたのこれ…うぅ…心配したよぉ…!」


泣き腫れた美代の瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれた。


『美代…ごめん』


「マサルさぁ…ん!」


『ごめんな…』



やわらかな美代の胸に抱きしめられながら


俺は生きているんだと実感した。



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