この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

帰省


――――翌朝








あれから、あまり眠れなかった俺は夜明けと共に寝室を抜け出した。



寝室は…


美代の寝息がやたらと耳について体がもたん。


しかも寝相の悪い美代は平気で俺に素足を向けてくる。


人間になってから毎晩美代の隣で寝ていたのに


なぜ今さら美代の隣で寝れなくなるのか…


俺はリビングに座り込むと
ふぅ―――…と深く息をはいて頭をかいた。



……こんな時は料理に限る。


俺は邪念を追い払うべく、早速キッチンへと向かった。




トントントン


静かなキッチンにまな板と包丁の音が響く。


鍋からは味噌汁の匂い。


白米を炊いた土鍋からは白い泡がこぼれていた。


これにメインの納豆と副菜を添えれば完璧な朝食だ。


やはり料理はいい。


人間になって数日にして、料理はもはや俺の得意分野になっていた。


無心で料理をすることで、邪念が拭われる。


< 310 / 513 >

この作品をシェア

pagetop