この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
シャ―――…


流しで落ちたスプーンを水洗いしながら


俺は頭を整理する。



つまり…


俺と伸太郎は知り合いのはずなのに、伸太郎は俺のことを知らない訳だよな。


そんな中で俺と美代が一緒に帰省したら…


伸太郎からしたら大切な娘と、いきなり知らない男が揃って帰ってきて


しかも同棲までしてるってことになる。


さらにその男は父親の知り合いだと嘘を付いて、同棲してる訳だ。



な…なんてことだ…


どうしよう。


俺は必要以上に時間をかけてスプーンを洗いながら頭をフル回転させた。



しかし―――…


「マサルさ―ん。今週末に帰省するってパパにメールしたよぉ!」


非情にも…


そんな美代の明るい声がキッチンに向けられた。


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