この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺はそんな美代を見つめて、昔を思い出していた。


美代にシロツメ草の首飾りの編み方を教えてもらったのもここだっけ。


そう思いながら辺りを見渡すと、木々の麓にシロツメ草が生えていた。


俺はそこに近付くと、そっとシロツメ草を摘んだ。


細くてみずみずしい茎を傷めないように、根元から優しく摘む。


そういやうさぎの頃にも一度、シロツメ草でハートを編んだ。


銀とボスにまで手伝ってもらい悪戦苦闘したっけ。


俺は小さく思い出し笑いしながら、いま摘んだばかりのシロツメ草を丁寧に結っていった。


器用に動く手先。


あの時は作れなかったハート型が今なら簡単に編めた。


好きを伝えようと必死だったあの頃。


俺はふと美代を見た。


美代は座り込んでなにやら草花を摘んでいるようだった。


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