この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「……………」


そんな俺に、美代は提げていたポーチの中から何かを取り出した。


「これ…ね?昔うさぎのマサルさんからもらったんだけど」


「ん?」


美代が取り出したもの。


それはかつて俺があげたハート型のシロツメ草の押し花だった。


その形はハート型とはいえないけれど…


「私の宝物でいつも手帳に挟んでるんだ」


こんなぼろぼろの押し花を大切そうに両手で包むと、美代はうっすらと頬を染めた。


「美代…」


「なんだか…マサルさんとうさぎのマサルさんて本当に行動までそっくり…」


「…………」


「ねぇ、マサルさんのこのハートは…どういう意味?」


「え?」


「マサルさんて…天然だから分かんない。私…また勘違いしてがっかりしたくないよ…」


そう言うと美代は少し俯いた。


不安げに小さく揺れる長い美代のまつげの下で、白い頬が紅く染まっていた。



< 347 / 513 >

この作品をシェア

pagetop