この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺は慌てて鼻をすする。


「太郎を親友と見込んで…1つ頼まれてくれるか?」


『ブヒ?』


「俺が消えた後、こうやって美代の隣にいてやって欲しいんだ」



本当は…俺が隣にいたい。


美代が悲しい時は俺が美代の涙を拭いてやりたい。


俺が笑顔にしてやりたい…。


だけど


「俺じゃ美代を幸せに出来ないんだ…」


『ブ…ブヒ~…』


「俺じゃ…駄目なんだ…」


『…………』


「ごめん…」


『ブヒ…』


太郎は優しく俺の涙を舐めた。


『美代ちゃんは僕や鈴子が必ず笑顔にするブゥよ』


「…ありがとな」


『マサルも…今までありがとブゥ。僕…マサルが大好きブヒよ…』


「はは、俺も太郎が大好きだ」














その翌日、


俺と美代は実家に別れを告げ、あの白い小さなアパートへと帰ったのだった。

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