この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

不穏な影

大きな楠の木の隣にある、白い小さなアパート。


いつもと変わらない朝。


俺が作る朝飯と


それを美味しいとほお張る美代の笑顔。


「そんなに旨いか」


「うん。マサルさんの卵焼き大好き~」


「そうか。じゃあ俺のもやるよ」


美代の笑顔は平和の象徴だ。


この笑顔のためになら、俺は何でもしてやれると思う。


「じゃあ私はトマトあげるね?」


「あ…?それはダメだ。野菜もちゃんと食え」


「え~!?マサルさんもにんじん食べれないくせに~?」


「…食べれないことはないぞ。嫌いなだけだ」


「え~なにそれ~」


美代はぶうぶうと文句を言う。


「あ!そうだ」


そして美代はふと思い出したように


まだリビングの隅にかためてあるボストンバッグをごそごそやった。


「……?どうした?」


「ふふふ、マサルさん手を出して?」


美代はわくわくした顔で振り向いた。


< 359 / 513 >

この作品をシェア

pagetop