この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「初めまして。私はここの総責任者の尾崎です。」


「俺は…マサルだ」


俺は尾崎に促されるまま握手をした。


「マサル君に会えて嬉しいよ。しかし今は挨拶よりもこっちが先決だな」


尾崎は優しい目で一度俺の肩に触れると


報道フロアの端にあるTVに向かって俺を誘導するように歩きだした。


「お…俺たちも付いて行って良いのか?」


俺の後ろでおろおろするヒゲ男と夏美。


「一緒でいいだろ…」


俺はヒゲ男を促すように手をとった。


「…!!」


ヒゲ男は少し驚いた顔で俺を見る。


多分…俺の手が震えていたからだろう。



ヒゲ男は何も言わずに俺の手を握りかえした。


「……………」


「……………」


今まで報道フロアの雰囲気にビビっていたくせに…


ヒゲ男は、俺を勇気付けるように小さく笑った。


そして俺たちは尾崎に続き報道フロアの端に設置されたTVに向かって歩きだした。








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