この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
その時―――…


コツ…コツ…


靴を鳴らし、画面の端から一人の男が歩いてきた。


真っ黒なスーツに黒髪を固め、細い眼鏡をかけているインテリ系の男。


口元だけは黒い布を巻き覆面していた。


男は美代の隣に立つと、スッとこちらを見た。


冷徹な目。


画面ごしに男と目が合った…






《我々の要求は4つだ》





男は淡々と喋りだした。


《1つ。マサルという少年に、今から言う事を伝えろ。伝えられない場合は、この女を殺す》


男は目隠しの美代に手を伸ばすと、その頬にそっと手を添えた。



そして――…








パシンッ!!



渇いた音が画面の向こうに響いた。



「…!!!」


男が美代の頬を叩いた音だった。




ガタガタッ!


俺は思わず椅子から腰を浮かした。


夏美は口に手を当てて小さな悲鳴をあげる。


美代は叩かれたままの姿勢で、だらんと顔を項垂れていた。




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