この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐



「CM明け15秒前です!」






ADの声に、ディレクターとタレントが我に返る。


「ふえぇえ~…!?こんなの聞いてません!私どうしたら…」


秒読みが始まりタレントはパニックを起こし始めた。


俺は台本をディレクターに返しながらタレントを見た。


「大丈夫だ。落ち着け」


「はぁ?誰のせいでこんな…!」


「台本なんて要らない。俺に任せろ」


最初から、俺は台本なんてなくても良かったんだ。


「ふぇ…?!」



そして、生中継はタレントの
ふぇ?の顔から再スタートを切ったのだった。











「こいつの名はジェミーというらしい」


「え~お兄ちゃん、このキリンはケンケンって名前だってこの看板に書いてあるよ~?」


「違う。それはここの職員が考えたものだ。こいつはアフリカではジェミーだったらしい」





クスクス…


野次馬から笑い声が聞こえる。


「嘘だよ~ケンケンだよ!僕ケンケンににんじんあげるもん!」


少年は餌用のにんじんを手にした。



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