この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
今、この時間は来園客がキリンに直接餌をやれる体験ゾーンになっている。


野次馬の中では少年の両親がハラハラ顔でそれを見ていた。


「ケンケン!ケンケン!」


少年はにんじんをジェミーに向けつきだした。


しかしジェミーはそっぽを向いたままだ。


「すみません。あのキリンはこの動物園にきたところで…まだなかなか言うことを聞かないんですよ」


作業服をきたキリンの飼育員が保護者に向け申し訳なく笑う。


「違う。ジェミーと呼ばないから分からないんだ」


「え~?ほんとかなぁ?」


「やってみろよ」



少年は疑心に首をかしげながらも今度はジェミーと呼んだ。


すると


ジェミーは長い首をこちらに回し、黒い舌でにんじんを食べた。


「う…わぁぁ~!!」


少年は歓喜に体を震わせた。


「ふ…ほらな?」


「お兄ちゃんすごぉぉい!!」


少年は顔を輝かせ、周りの大人たちは驚いた顔をしていた。


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