この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「だけど…ジャックは、今の名前も気に入っているらしい。あんたのことも好きらしいぞ」
俺は飼育員の肩を叩いた。
「え…?」
「あんたがいつも遅くまで掃除や餌の用意をしているのを、ジャックは…いやユンユンは見ているそうだ」
「…………」
「この前は高熱があるのに世話にきたらしいな?」
「…!!!」
「自分たちを本当の子供のように育ててくれてありがとうと、ユンユンが礼を言ってるぞ」
「…………!!」
俺の言葉に飼育員の目が潤んだ。
「…うちには子供がいないから…こいつらは本当の子供みたいなもんなんです」
「あぁ。ユンユンもそれをちゃんと感じているぞ」
「うぅ…ありがとう」
飼育員は涙を流した。
「……………」
こんな緊急事態だが……
飼育員の涙に、言葉に。
俺の暗い心にやわらかな灯りが灯った気がした。
美代を危険な目にあわせてしまったこんな能力
消えてしまえと思った。
いらない、自分はもう消えるべきだと思った…
だけど
俺にはこんなことも出来たんだな。
こうやって気持ちの橋渡しも出来るんだ……。