この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺はその後も動物園内を自由に歩きながら、園内の動物たちと会話をしていった。
歩きながらギャラリーもどんどん増えていく。
俺と動物のやり取りに笑い声が、時には驚きの声が飛び交った。
台本通りではないが、多分なかなか良い出来なんじゃないだろうか…
その証拠に
鬼のようだったディレクターもいつの間にかギャラリーと一緒に笑っていた。
「中継時間そろそろ終了です」
CM中、ADの言葉に俺はディレクターの元へ駆け寄った。
「放送の最後に…ちょっとだけ時間をもらってもいいか?」
「ん?あぁ、好きにしろよ。今さらあんたが何しても誰も驚かねぇからな」
はは、と笑うディレクターに俺は礼を述べた。
そしてCMあけ、カメラが俺に向けられた。
「…………」
俺は目を閉じた。
果たして…俺に出来るだろうか
まだ試したことはない。
もしかしたら、出来ないかもしれない――…
だけど、俺は美代を助けたい。
美代―――…
そして俺は目を開くと、カメラに向かって語りだした。