この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
振り向くと女性タレントがにこやかな笑顔を向けていた。


「え?あ、あぁ…あれはちょっとした…自己満足だ」


俺は曖昧に微笑んだ。


「えぇ~?何て言ってたのか教えてくださいよ~」


最初、台本のことでヒステリーを起こしかけていた怖い顔はどこにもない。


女性タレントは本来の甘えるような笑みで俺の腕にタッチしていた。


「このあと空いてる奴で昼飯食いに行くんすけど!マサルさんもどうっすか?」


スタッフのひとりが俺に声をかけてくれた。


「私も行きます☆朝からいきなりのスケジュールで何も食べてないからもうペコペコですよ~」


「俺も俺も!でも今日はディレクターが奢ってくれるらしいぞ!?」


「わ~!?本当ですか?嬉しい~☆」


女性タレントはニコニコとまた俺を見た。


「マサルさんも是非行きましょうよ!」


「……………」


無邪気なその笑顔に、俺は複雑な気持ちではにかんだ。


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