この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
プロペラの回転数が更に上がり


俺たちを乗せた機体がゆっくりと垂直に浮き上がった。



「尾崎…!色々ありがとう。恩に着る!」


俺はヘリの窓から叫んだ。


尾崎には感謝してもしきれない。


尾崎は大きく頷く。



そして


「じゃあまた後でな夏美!ちょっくら行ってくるぜ!」


プロペラ音にも負けないヒゲ男の大きな声と共に


ヘリはヴォン…と本格的に上空へと舞い上がった。


「絶対…帰ってきなさいよね――!!」


夏美の声をバックに、そのままドンドン離れていくTV局。


「……!!」


窓の下では広がる都市。


高層ビルの間を走る車はミニチュアのようにゆっくり走って見えた。


そしてついに夏美たちが見えなくなった時


ヒゲ男は密かに涙を拭いた。


「…………」


俺は気付かないふりをして、静かに窓の外に目を向けた。













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