この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
しばらく飛ぶと眼下の景色が街から海に変わった。
「――…なぁ、マサル」
ふいに、ヒゲ男が言った。
「あぁ?」
「俺…もし死んじまってもお前のこと恨んだりしね~からよ」
「……………」
俺はヒゲ男を見た。
「……大丈夫だ。前にTVで見たが、バカは死なんらしいぞ」
「はは、お前それ風邪ひかないの間違えだし」
ヒゲ男が小さく笑い、機内にまた沈黙が訪れた。
「――…なぁ、マサル」
「……あぁ?」
「すっげ~綺麗だな……」
「……………」
俺がヒゲ男を見ると、ヒゲ男は窓の外に顔を向けていた。
俺も静かに景色を見る。
窓の外では、2時の方角にある白い太陽が海の波間を細かく光らせていた。
きらきらと光る水平線は丸く、空はどこまでも広い。