この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐



しばらく飛ぶと眼下の景色が街から海に変わった。






「――…なぁ、マサル」


ふいに、ヒゲ男が言った。


「あぁ?」


「俺…もし死んじまってもお前のこと恨んだりしね~からよ」


「……………」


俺はヒゲ男を見た。


「……大丈夫だ。前にTVで見たが、バカは死なんらしいぞ」


「はは、お前それ風邪ひかないの間違えだし」


ヒゲ男が小さく笑い、機内にまた沈黙が訪れた。





「――…なぁ、マサル」


「……あぁ?」


「すっげ~綺麗だな……」


「……………」


俺がヒゲ男を見ると、ヒゲ男は窓の外に顔を向けていた。


俺も静かに景色を見る。


窓の外では、2時の方角にある白い太陽が海の波間を細かく光らせていた。


きらきらと光る水平線は丸く、空はどこまでも広い。




< 414 / 513 >

この作品をシェア

pagetop