この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
砂埃と共に、ヘリは無事に砂浜に着いた。
俺とヒゲ男はヘリから降りる。
砂浜に足をつけるとジャリ…と石の混じる音がした。
「…ここ……か…」
俺は島を見た。
海岸線はなだらかにカーブを描き、砂浜から奥には木々が生い茂っている。
ザザ―ンと潮の音。
港や民家は見えない。
まさに無人島。
「――では…私はこれにて失礼します」
パイロットが少し気まずそうに声をだした。
「あ…あぁ、ありがとう。助かった」
「いえ、あの…頑張ってください」
そして
パイロットが別れを告げると、ヘリはゆっくりと浮上を始めた。
轟音と風を巻き起こしながら、上空へと舞い上がるヘリ。
上空へと消えていくその影を追いながら、俺とヒゲ男は言い知れぬ不安に襲われていた。
ヘリが去り、味方が去って、なんとも言えない喪失感を感じる。
「大丈夫だって、俺がいっからよ…」
ヒゲ男がポツリと言った。
「お前…声が震えてるぞ」
「…………」
俺とヒゲ男は顔を見合せて少し笑った。
今、一人きりじゃなくて良かったと心から思う。