この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
草木の生い茂る獣道をガサガサと進む。
夏の日差しは木々に遮られているが辺りはむぅと蒸し暑い。
流れる汗に緊張で切れる息。
なのに指先は冷たく感覚がなかった。
しばらく進むと古い廃墟が見えた。
「おら!さっさと入れ!」
俺とヒゲ男は背中を銃口で無理矢理押され、廃墟に入れられた。
「ぐっ…」
前のめりにコケそうになる体をなんとか立て直し、顔を上げる。
「…!!!」
その瞬間、俺は目を見開いた。
廃墟の奥には椅子に縄で縛られ目隠しと口布を当てられた美代がいたからだ。
美代は静かに頭を垂れていた。
画面ごしではない、リアルな美代の痛々しい姿に俺の胸がぎゅうと鳴る。
「み…よ…ッ!!」
喉がつまって声が裏返りそうになる。
そんな俺の声に美代の頭がぴくりと動いた。
ゆっくりと顔を上げる美代。
俺の体は思わず美代の元へ行こうとする。