この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
しかし、それは周りにいる覆面によって阻止された。


「……!!!」


向けられる複数の銃口に俺の体は固まる。



やっと、こんなに近くまでこれたのに―…


俺と美代を隔てる壁は凶暴で厚かった。





その時


廃墟の奥で優雅に煙草を吸っていた男がゆっくり立ち上がった。


男は煙草を灰皿に押し付けるとコツコツと美代の横まで歩く。


長めの髪をキッチリ後ろに固め眼鏡をかけた男。


ビデオと違い口に布は覆っていないが、あの冷酷な目は変わらない。


美代を殴った男…


そしてそれは間違いなく


尾崎に見せられた、密猟で国際指名手配されているという、あの男の写真と同じ顔だった。


「やぁ、マサル君…ようやく会えたね。嬉しいよ」


男は妖艶な黒い笑みを浮かべる。


「君の可愛いガールフレンドもとても良い子で待っていてくれたよ」


そう言うと、男は美代の目隠しに手をかけた。


男に触れられびくっとなる美代の体。


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