この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「ところで…私はマサル君だけを呼んだはずだが?」
指名手配の男は首をかしげながらヒゲ男を見た。
その視線に、ヒゲ男は一瞬ひるんだ。
「お…俺はマサルの親友だ!!」
ヒゲ男は恐怖を振り切るように叫んだ。
「いいか!今すぐに美代ちゃんを解放しろ!さもないと俺がお前をぶちのめすぞ!!」
「……………」
「は…はったりなんかじゃねぇからな!!俺には親父直伝の包丁さばきがあ」
パァンッ!!!
廃墟に銃声が響き、辺りにいた鳥たちが一斉に飛び立った。
―――え?
一瞬の 出来事だった。
俺が気付いた時には、隣にいたヒゲ男が床に倒れていた。
いつの間にか、男は銃口をこちら側に向けていて
その鈍く光る小さな銃口からは白い煙が上がっていた。
「は………?ヒゲ男……?」
「……………」
「おい………」
俺の声にヒゲ男は反応しない。
俺はしゃがみこむと倒れているヒゲ男の体に触れた。
「お…い…どうした?」
「……………」
横たわるヒゲ男の下に流れる赤い血が見えた。
………!!!!!!
「う…わあぁぁぁ――…!!」
俺の悲鳴が廃墟に響いた。