この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
俺は葛藤の末、男に小さくうなずいた。
ヒゲ男を死なせたこの男に、今は従うしかなかった。
ゴメン、ヒゲ男
俺に力がないばかりに…
こんな形でしか美代を救えない
「そうと決まれば早々に出発だ」
男は意気揚々と準備を始めた。
「…どこに行くんだ?」
俺は死んだ魚のような目で男を見た。
「海岸にセスナ機を停めてある。国内は何かと不便なんでね」
「……………」
海を越えるのか……?
俺は力が入らない体で美代を見た。
美代もうなだれて泣いている。
美代…
美代を守らなきゃ…
俺がしっかりしないで誰が美代を救えるんだ。
俺は血が滲んだ拳を握り直した。
「美代も…一緒に連れて行きたい」
「うん?」
「あんたらの側じゃなく…俺の側で」
多分、それが今の俺にできる精一杯だろう。
何かあった時には俺が美代の盾になる。
美代だけは…